知的障害と発達障害の違いとは?診断基準などもわかりやすく解説!

知的障害と発達障害の違いとは?診断基準などもわかりやすく解説!

療育

発達支援

1. はじめに:知的障害と発達障害の違い、どう理解すればいい?

知的障害と発達障害は、どちらも「成長や生活のしづらさ」が出てくる点ではよく似ており、保護者や支援者からは同じように見えることが少なくありません。 一方で、知的障害は全体的な学びや理解のペースがゆっくりになりやすく、発達障害はコミュニケーションや注意、こだわりなど特定の分野に強い凸凹が出やすいという違いがあります。

医療の場では診断名や検査結果、教育の場では学習面への影響、福祉の場では利用できる制度やサービスの違いが重なり、現場ごとに説明の仕方が変わるため、なおさら混同されやすいのが実情です。 本記事では、こうした「似ているけれど違う」ポイントを整理しながら解説していきます。

2. 知的障害(知的発達症)とは?

知的障害(知的発達症)は、「生まれつき学びや生活に大きなハードルがある状態」と説明されることが多い障害です。 単に勉強が苦手というだけでなく、言葉の理解やコミュニケーション、身の回りのことなど、日常生活の幅広い場面で支援が必要になる場合があります。 ここでは国際的な診断基準やIQ、適応能力との関係をわかりやすく整理します。

知的障害の定義(ICD-11・DSM-5基準)

ICD-11やDSM-5では、知的障害(知的発達症)は「発達期に始まり、知的機能と適応機能の両方に明らかな困難がある状態」とされています。 知的機能とは、理解力・推論・問題解決・学習などの力のことで、検査や臨床的評価で総合的に確認されます。 適応機能とは、年齢相応の生活や社会参加に必要なスキルがどの程度身についているかで、「概念的・社会的・実用的」な3領域から評価されます。 これらが発達期(おおむね18歳未満)から続いている場合に診断が検討されます。

判定のポイント:知能指数(IQ)と社会適応能力

知的障害の有無や程度を判断するとき、かつてはIQの数値が重視されていましたが、現在はIQだけでは判定しないことが原則になっています。 一般的にはIQ約70未満が一つの目安とされつつ、実際には「どのくらい自分の身の回りのことができるか」「ことばやお金、時間をどのように使えるか」など、社会適応能力もあわせて丁寧に評価します。 そのうえで、軽度・中度・重度・最重度といった重症度分類が行われ、支援内容や目標設定の参考にされます。

症状や日常生活への影響(学習・生活・コミュニケーション面)

学習面では、読み書き計算の習得に時間がかかったり、一度覚えたことを忘れやすかったりと、学校の授業についていくこと自体が大きな負担になります。 生活面では、着替えや身だしなみ、金銭管理、公共交通機関の利用などでサポートが必要となることが多く、年齢が上がるほど差が目立ちやすくなります。 コミュニケーション面では、言葉の理解に時間がかかる、抽象的な表現が分かりにくい、相手の気持ちを読み取るのが難しいといった特徴が見られ、人間関係づくりに支援が求められるケースもあります。

医療と教育・福祉での呼び方の違い(知的発達症・知的障害)

国際的な診断基準では、かつて「精神遅滞」と呼ばれていた概念が見直され、ICD-11では「知的発達症」、DSM-5では「知的能力障害/知的発達症」という名称が使われています。 一方、日本の法律や福祉制度では、依然として「知的障害」という用語が広く用いられており、障害者手帳や福祉サービスの名称もこの表記が基本です。 医療の場では診断名として「知的発達症」、福祉や教育の場では支援対象として「知的障害」と表現されることが多く、現場では両方の言葉がほぼ同じ意味として並行して使われているのが実情です。

3. 発達障害とは?

発達障害は、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)を含む総称で、生まれつきの脳の発達の偏りによって起きる特性のことを指します。 これらは一人ひとり特性の出方が異なり、支援も多様に求められます。知的障害をともなう場合ともたない場合があり、それぞれに応じた理解と対応が必要です。診断は専門医による面接や行動観察、検査を通じて行われます。

発達障害という総称(ASD・ADHD・LDなど)

発達障害という言葉は、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つの主なタイプを含む広い意味の総称です。ASDは社会的コミュニケーションや対人関係が難しい特徴があり、特定の興味や行動に強いこだわりが見られます。ADHDは集中力の欠如や多動、衝動的な行動の傾向があり、LDは特定の学習過程に困難がある障害です。

根本的な発達障害の特徴

発達障害の根本的な特徴は脳の発達のばらつきによる神経発達の偏りです。このため、注意力・社会性・感覚過敏・行動パターンなどに特有の偏りが現れます。これらは病気ではなく、生まれつきの特性で、本人の努力不足とは異なります。

「知的障害がある発達障害」と「知的障害のない発達障害」の違い

「知的障害を伴う発達障害」は、知的機能に全般的な困難があり、基本的な学びや生活機能の支援が重点になります。一方「知的障害のない発達障害」は、一般的な知能を持ちつつも、社会的・行動的な困難や学習の特定部分の苦手さなどが見られます。支援内容はそれぞれ異なりますが、いずれも本人の特性理解が大切です。

発達障害の診断基準と、診断を受けるまでの一般的な流れ

診断は専門医による面接や発達検査、親子や教育・支援者からの情報収集を組み合わせて行われます。医療機関での相談開始から診断までには数回の診察が必要です。診断後は、支援プランの作成や療育、福祉利用の準備などが続きます。診断に至るまでの流れは個別で、本人や家族の不安を踏まえて進められます。

4. 医療と福祉の観点における違い

知的障害と発達障害は、医療では診断・治療の対象として、福祉では支援サービスの対象として捉えられますが、関わる制度やアプローチに明確な違いがあります。 医療は専門医が診断名を付け、症状管理を担い、福祉は手帳や計画を通じて生活支援を提供します。 両者が連携することで、本人中心の包括的な支援が可能になります。保護者や支援者は、このすみ分けを理解することで、適切な制度利用がしやすくなります。

医療(診断・治療)の観点

医療では、知的障害はIQ70未満と適応機能の低下を基準に「知的発達症」として診断され、医師(小児科・精神科)が発達検査や面接で判定します。 発達障害はASD・ADHD・LDなどの診断名で、脳機能の偏りを評価し、薬物療法や行動療法を組み合わせます。 知的障害は原因特定の症候群(ダウン症など)が多く、合併症管理が中心。一方発達障害は特性理解が主で、治療より調整が重視され、医師の継続関与で症状モニタリングします。

福祉(支援・サービス)の観点

福祉では、知的障害は「療育手帳」が交付され、生活スキル向上のための障害福祉サービス(居宅介護・短期入所など)が利用可能です。 個別支援計画を作成し、自立度に応じたサービス量を決定します。 発達障害は知的障害を伴わない場合「精神障害者保健福祉手帳」で、行動支援や就労移行支援が中心。知的障害併存時は療育手帳優先となり、障害年金や手当も共通利用可能ですが、計画相談で特性別に調整されます。

どのように連携しながら支援が行われているか

医療診断を基に福祉サービスが開始され、医師の意見書で手帳交付や計画策定がスムーズになります。 発達障害者支援センターが医療・福祉・教育の橋渡し役を担い、定期的な情報共有で支援を調整。例えば、医療でADHD薬を処方し、福祉で環境調整を実施します。 知的障害では療育手帳で日常支援、発達障害では行動特性に特化したプログラムを連携。保護者参加のケース会議で進捗確認し、就労移行まで一貫支援します。

保護者や支援者が知っておくべき制度のすみ分け

知的障害は療育手帳中心で生活全般支援、発達障害は精神保健福祉手帳で社会性・行動支援を優先。 併存時は重い方を主手帳にし、重複サービスを避けます。市区町村の障害福祉課で相談し、診断書提出で手続き。支援計画は毎年見直し、医療情報で更新。 保護者は「医療で診断→福祉で手帳・サービス」と流れを把握。就労時は発達障害向け支援センター活用を。誤用防止のため、自治体基準を確認しましょう。

5. 知的障害と発達障害の困りごとの違い

知的障害と発達障害は似ている面もありますが、それぞれで困ることの内容や度合いが異なります。学習の難しさや行動面、社会性の課題は異なる特徴を持ち、また年齢や成長段階に応じて困りごとの現れ方や支援の方向性も変わってきます。

学習・行動・社会性それぞれで異なる困りごと

知的障害では、読み書きや計算などの学習全般に時間がかかり、論理的思考や問題解決が苦手です。また、日常の自己管理や礼儀作法、時間管理などの行動面に困難が生じます。社会性も未熟で、他者との関わり方や感情の調整が難しい場面が多く見られます。

一方、発達障害は特定分野の偏りが強く、例えばADHDでは注意散漫や多動が目立ち、ASDでは対人コミュニケーションの独特さが目立ちます。学習は得意分野もあれば苦手分野もあり、行動のパターンも個人差が大きいです。

成長段階別(幼児期・学齢期・成人期)の特徴と支援の方向性

幼児期には、知的障害は言葉や認知発達の遅れ、基本的生活動作の習得支援が中心です。学齢期になると学習の遅れ顕著で、学校生活や日常生活の自立度向上が課題になります。成人期では就労や独立生活支援が重要に。

一方、発達障害では幼児期から社会コミュニケーションの特性に気づきやすく、適切な環境調整や行動支援が早期から必要です。学齢期以降は得意・不得意の差に応じて個別支援計画を細かく策定し、成人期は社会参加や就労支援を深化させます。

事例で見る「得意・不得意」の違い

知的障害のある人は、全般的な学習や生活スキルが苦手で、たとえば数の概念の習得が難しかったり、時間管理が不得意だったりします。逆に特定の得意分野が少ない傾向にあります。発達障害の人は例えばASDで数学は得意でも言葉の理解が苦手、ADHDでは集中が持続しにくい一方で想像力や直観に長けているなど、得意不得意の差が大きく個別性が強いのが特徴です。支援はこうした特性を活かすことがカギとなります。

6. 支援や療育のアプローチの違い

知的障害と発達障害では、支援のアプローチが特性に合わせて大きく異なります。知的障害は生活スキルや自立を重視し、発達障害はコミュニケーションや環境調整を中心に据えます。就労・学習支援でも具体策が変わりつつ、どちらも「特性理解と強み伸長」が共通の姿勢です。

知的障害(知的発達症)への支援:生活スキル・自立支援中心

知的障害の支援は、着替え・食事・金銭管理などの基本生活スキルを反復練習で身につけ、自立度を高めることが中心です。視覚支援(絵カード)やタスク分割を使い、日常動作を習慣化。重度の場合、24時間介助を想定した長期計画を立てます。目標は「一人でできることの拡大」で、施設ではグループ活動を通じて社会ルールを学びます。就労移行では単純作業の反復訓練を重視し、保護者巻き込みの家庭支援も並行します。

発達障害への支援:コミュニケーション・環境調整・行動支援中心

発達障害はASDの社会的スキル向上、ADHDの注意持続訓練、LDの学習戦略指導が主軸で、さらに環境調整(騒音低減・スケジュール視覚化)でストレス軽減し、TEACCH法やソーシャルスキルトレーニング(SST)を活用したりします。行動支援ではポジティブ行動支援(PBS)で問題行動を代替スキルに置き換える方法を用いるなど、特性評価に基づくカスタム計画が鍵で、感覚統合療法も併用します。

就労支援や学習支援など現場での具体的アプローチ例

就労支援では、知的障害はB型事業所の単純作業(梱包・清掃)から反復練習、発達障害はA型や就労移行支援でジョブコーチ付きの環境調整を実施します。学習支援は知的障害で生活単元学習(実践中心)、発達障害でユニバーサルデザイン授業やICTツールの活用も増えています。

共通して大切な姿勢:「特性を理解し、強みを伸ばす支援」

両障害共通の姿勢は「その人らしさ」を尊重し、弱み補完より強み発揮を優先します。知的障害では記憶力の良い子にルーチン業務、発達障害では集中力の高い子に専門作業を割り当てるなどの事例があります。家族・学校・福祉のチームアプローチで情報共有し、PDCAサイクルを回し、支援者は共感力と柔軟性を養いながら「できることを増やす」視点でモチベーションを保ちます。この姿勢が自立とQOL向上につながります。

7. 療育機関にはどんな種類がある?

療育機関は、知的障害や発達障害の子ども・成人を対象に多様な支援を提供します。児童発達支援から就労支援までライフステージに合わせた施設があり、医療との連携も鍵です。支援者として働く道も広がっており、資格取得で専門性を高められます。

児童発達支援・放課後等デイサービス

児童発達支援は0〜6歳児を対象に、集団生活や基本スキルの療育を行い、個別計画で言語・運動・社会性を育てます。放課後等デイサービスは小中学生が放課後利用し、宿題支援・レクリエーション・生活訓練を組み合わせ、保護者の respite(休息)も担います。知的障害は自立スキル中心、発達障害はSSTや感覚統合を重視。利用は障害児通所支援として手帳不要ですが、自治体申請が必要です。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは地域拠点で、相談・発達支援・就労支援を提供。診断前後の本人・家族・職校関係者からの相談に応じ、福祉制度紹介や医療連携、発達検査を実施します。就労では特性に合った仕事探しを支援。無料で利用可能で、都道府県ごとに設置。普及啓発研修も行い、支援ネットワーク構築に貢献します。

就労継続支援(A型・B型)事業所

就労継続支援A型は雇用契約を結び最低賃金以上の給与で働く事業所で、一般就労移行を目指します。B型は雇用契約なしの非雇用型で工賃を得ながら作業訓練をおこないます。利用は手帳提示で自治体契約、個別支援計画で目標を設定します。

医療機関(発達外来・小児科・精神科)と福祉サービスの連携

医療機関の発達外来・小児科・精神科は診断・薬物療法・行動療法を担い、意見書で福祉手帳交付を後押しすることもあります。福祉サービスは診断基に計画相談で療育・就労支援を開始し、定期ケース会議で情報を共有します。

8. まとめ:知的障害と発達障害の違いとは?診断基準などもわかりやすく解説!

知的障害と発達障害は、それぞれ違った特性と困難を抱えており、適切な支援を行うためにはこれらの違いを正しく理解することが重要です。知的障害は知的能力や日常生活スキルに広範な影響があり、基本的生活能力の向上支援が中心です。一方、発達障害は脳の発達特性による社会性や行動の偏りが特徴で、コミュニケーションや環境調整を重視した支援が必要になります。この違いを踏まえた支援が子どもや家族の生活の質を大きく向上させ、社会全体の理解促進にもつながります。

これから福祉・療育分野で働きたいと考えている方は、「人の成長を支える仕事」としての魅力とやりがいを感じられるはずです。当サイトでは、そんな福祉分野での求人情報を多数掲載しています。ぜひ一歩踏み出し、共に支援の現場で活躍しましょう。

Recommended columnあなたにおすすめ

career consultant

キャリアアドバイザーに
直接相談しませんか?

多数の求人の特徴や情報を熟知している担当者に直接ご相談していただくことが可能です!
お気軽にご利用ください。

相談してみる